本記事では、建築業において工程表を作成する目的から、作成時のチェックポイントなどを複数挙げて細かく解説します。
更に、エクセル版テンプレートを活用した工程表の無料ソフトも紹介します。
単に工程表といっても種類は様々あり、本記事を通してそれぞれの特徴を説明しています。
現場の問題を可視化・解決してくれる自分に合った工程表の選び方を学び、導入に当たってエクセルの無料テンプレートや業務効率化ツールの導入・活用を検討してみてください。
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工程表とは、道しるべ
建築業における工程表とは、「道しるべ」です。
そもそも建築業とは建物を建設する業種のことであり、具体的には、学校や病院、商業施設、マンション、ビルなど生活の拠点となる構造物を造ることを指します。
建築業には、その他にも、内装のデザインや電気工事、配管工、空調工などの設備業も含まれます。
モノを造る大工などの職人以外にも空間を設計する建築士やインテリアデザイナーや設備技術者が該当します。
上述を踏まえて、建築における工程表とは、「道しるべ」だと考えております。
建築現場では上記職種の他にも様々な工種の人間が輻輳して建築物を構築していきます。
工程表は、どのチームがどのくらいの期間、どの箇所を作業するかが明記された道しるべなのです。
具体的には、塗装工や配管工が業務上干渉しない配置、タイミングで作業を行えるように工区や時期をずらし、建築物の竣工(完成)まで滞りなくスムーズに各業者が作業に着手できる日程、資機材の搬出入、検査日程の調整を工程表は示します。
建築業向けの工程表の種類
次に建築業における工程表の種類別に特徴や使い分けの仕方を解説します。
工程表の種類には、基本的に①バーチャート工程表、②ガントチャート工程表、③ネットワーク工程表、④グラフ式工程表(曲線式工程表)、⑤出来高累計曲線の5種類があります。
それぞれの特徴と使い分け方を下記の表に纏めています。
特徴 | 使い分け方 | |
---|---|---|
バーチャート | 作業項目(タスク)のスケジュールが分かる | 作業項目(タスク)のスケジュールを知りたいとき |
ガントチャート | 作業項目(タスク)の進捗率が分かる | 作業項目(タスク)の進捗率を知りたいとき |
ネットワーク工程表 | 作業項目(タスク)にかかる工数と各タスク間の関連性が分かる | クリティカルパスを調べるとき |
グラフ式工程表(曲線式工程表) | 作業進捗と作業予定日時の両方が分かる | 作業項目(タスク)の関連性も把握したいとき |
出来高累計曲線 | 作業進捗と許容値が分かる | 建築工事現場で工程管理曲線を示すとき |
それぞれの特徴について詳細は以下の通りです。
バーチャート工程表
バーチャート工程表は、建築業の工程表として最も使われやすい傾向にあります。
縦軸に作業項目(タスク)、横軸に日付を記入して、当該作業の期間をバーで示します。
その結果、各作業の開始・終了のタイミングから作業期間が分かり、当日にどの作業が動いているのかが一目でわかるものが出来上がります。
本工程表では、タスクと日付しか情報が無いため、担当以外の人が見ても、だれが何の作業をしているかが分かるため情報共有のしやすさの観点で大きなメリットがあります。
一方で、各タスク間の関連や流れが分かりづらいデメリットがあります。
ガントチャート工程表
ガントチャート工程表は、バーチャート工程表と見た目が似ており、縦軸に作業項目(タスク)、横軸は、日付の代わりに作業進捗を表します。
バーチャート工程表とは横軸だけが異なるため、作成の容易さや一目で何を示しているのか分かりやすいメリットがあります。
加えて、各タスクを行う日付も追記することで進捗とスケジュールが同時に一目でわかるようになり、スケジュール管理にも流用できます。
一方で、バーチャート工程表と同様に、各タスク間の関連や流れが分かりづらいデメリットがあります。
ネットワーク工程表
ネットワーク工程表とは、円と矢印を使って各作業項目(タスク)にかかる工数と各タスク間の関連性を示した作業工程表です。
上記①、②と最も大きく異なることは、各タスク間の関連性を示せることです。
これにより「クリティカルパス」を考えることができるようになります。
クリティカルパスとは、最も時間がかかり、遅延するとプロジェクト全体に影響するような工程のことを意味しており、工程作成上、非常に重要なポイントになります。
ネットワーク工程表では基本的に、ある作業項目(タスク)が終わらないと次の作業項目(タスク)に移れないウォーターフォール型のタスクに用いられる傾向にあります。
本工程表のメリットは、最短で工事を終わらせるために同時に進めることができる作業項目(タスク)は何か、どの作業項目(タスク)から着手することが効率的かを把握することが容易になることです。
一方で、作成が複雑で各作業の進捗を図るのには向いていないデメリットがあります。
グラフ式工程表(曲線式工程表)
グラフ式工程表(曲線式工程表)とは、バーチャート工程表とガントチャート工程表の2種類の特徴を併せ持つ工程表で、縦軸に進捗、横軸に日付を記載した曲線で進捗の程度を把握します。
本工程表のメリットとして、作業進捗と作業予定日時の両方が分かる一方で、バーチャート工程表やガントチャート工程表と比較して作成方法が複雑であり、各作業項目(タスク)間の関連性もつかみづらいデメリットがあります。
出来高累計曲線
出来高累計曲線とは、工事全体の進捗を図ることに適した工程表であり、縦軸に作業項目(タスク)の進捗率、横軸に日付を記載して作成します。
建築工事などの現場に用いられることも多く、工程管理曲線、バナナ曲線、S字カーブなどとも呼ばれています。
グラフの中で上方許容限界曲線、下方許容限界曲線を記入するため、スケジュールに対する全体の進捗状況と許容範囲を一目で確認できることが大きなメリットです。
一方で、各作業項目(タスク)を一つひとつの進捗は記載しないため確認できないデメリットがあります。
【建築業向け】見やすい工程表を作るコツ
建築現場において、工程表を作成するとき、大規模工事現場だと複数の作業が輻輳して一定期間に多くの作業が動くケースがあります。
そこで、工程表を工夫して見やすくすることで竣工(完成)までの重要度、クリティカルパス、道のりが分かるようになり発注者への説明も容易になります。
ここでは、工程表を見やすく作るためのテクニックを5つ紹介します。
- 分かりやすいデザインにする、色を使い過ぎない
- 工事エリアや作業内容ごとに纏める
- 週間工程・月間工程とリンクしている
- クリティカルパスが分かりやすい
- 行事日程、立会検査日、資機材の搬入日時が記載されている
分かりやすいデザインにする、色を使い過ぎない
最も初歩的で重要なことがデザイン性と配色です。
工程表にアレンジは少ない方がよく誰が見ても分かりやすいシンプルなものが好まれます。
配色も色を多数使い過ぎないことが重要であり、基本的には白黒が原則です。
特に重要なものだけ赤字で示すなどの2種類程度の色使いに限定するなどして工夫しましょう。
工事エリアや作業内容ごとに纏める
工程表で各作業項目(タスク)を記載するとき、作業エリアや作業内容で関連する作業項目を纏めて矢印などを用いて関連性を示す工夫も考えられます。
多用すると①に反し、分かりにくい工程表になってしまうので注意が必要ですが、関連する作業やエリアで分けた工程表は理解度の向上に寄与します。
週間工程・月間工程とリンクしている
大規模で数か月以上の工期の工事現場では、週間工程表・月間工程表・全体工程表が必要です。
週間工程表はほとんど毎日軽微な修正が入りますが、月間工程表は基本的に修正頻度が週間工程表に比べて低いです。
そのため、各作業の変更に伴い週間・月間工程表がリンクしていることが発注者説明にも非常に重要。
リンクしていると工期内の竣工の安定性も増す為、発注者に安心感を与えることができます。
クリティカルパスが分かりやすい
各作業項目(タスク)の重要性やボトルネック・クリティカルパスになる項目(タスク)が明確になる工程表は非常に良い工程表だと言えます。
何がマイルストーンになっていて、どこを目指すべきか現場の従業員が一同に考えを共通できるため臨機応変な対応が可能になります。
(マイルストーンとは、長期のプロジェクトにおいて、その中間地点ごとに重要なポイントを定め、進捗を確認する方法です。)
行事日程、立会検査日、資機材の搬入日時が記載されている
工程表には作業項目(タスク)の他にも、資機材の搬入日時、行事日程、立会検査日などが書かれているので分かりやすい工程表だと言えます。
大型資機材の搬出入は動線付近の作業を一時中断させたり、安全設備の設置など、附帯作業が必要になるケースがあります。
あらかじめ分かっている予定を記載しておくことで、作業が変わる可能性を想定できる工程表は良い工程表だと言えるでしょう。
【無料テンプレートもあり】建築業向け工程表作成ツール
最後に、建築工事現場で活用できる工程表の無料テンプレートを紹介します。
慣れていない人には、エクセルなど既に導入済みのソフトで工程表を作成する事がおすすめです。
一方で、建築工事現場用の業務効率化ソフトの活用も検討してみましょう。
工程管理ソフトには、出勤簿などの勤怠管理ツール、工程表作成ツール、出来形検査用の調書作成ツールなど現場で必要な書類のテンプレートが一式備わっています。
既に現場を複数経験していて慣れている大手・中堅企業や一人親方であれば、工程管理ソフトの導入もおすすめです。
エクセル
工程表を初めて作る方にはエクセルをおすすめします。
理由は、既に導入しているソフトで慣れるまでの時間を最小化することや無料でテンプレートが手に入りやすいソフトだからです。
建築業でもIT化、DX化への動きは遅れており、高齢者が多くの割合を占めるため、複雑でカスタマイズが可能な機能は余計に抵抗感を上げてしまいます。
そのため、導入初期や初めて工程表を作成する場合は、後述する無料テンプレートの利用から始めましょう。
エクセル工程表の無料テンプレート
建築現場で工程表を作成するとき、下記リンクより無料のエクセルシートをダウンロードできます。
ビズルート
中小企業に向けてIT化やビジネス支援を行っている株式会社エクシアのWebメディア部門が公開している無料版1ヶ月工程表のエクセルテンプレートです。
ダウンロードしてすぐに使えるため汎用性が高いです。
テンプレートNAVI事務局
工程表の1ヶ月シンプル版を無料でダウンロードできるテンプレートサイトです。
本テンプレートの特徴は、年と月を入力するとその月に合わせて日付が自動で入れ替わる関数が入っていることと、土日はそれぞれ青と赤色の文字になることです。
開始日、終了日を入力すれば入力した日付に合わせた欄に色がつき、作業日はオレンジ色の色が入ることも分かりやすさを向上させます。
曜日やセルの色に関して変更したい場合は「条件付き書式」で簡単に変えることが出来るため汎用性も高いです。
シンプルな工程表になっていますのでご自由にアレンジしてご利用ください。
(上段:シンプルタイプ、下段:色付きタイプ)
建設業向け管理システム アイピア
AIPPEAR NET(アイピアネット)は、今すぐ実践したくなる建築業向けノウハウを提供するために生まれたリフォーム・建築業界向け情報メディアです。
建築業界(リフォーム・工務店)向けテンプレート集のぺージから1ヶ月版の工程表のエクセルシートをダウンロードできます。
工程管理ソフト
上述で、建築工事現場用の業務効率化ソフトを活用する方法を挙げました。
工程管理ソフトは現場に合ったカスタマイズが可能で、かゆいところに手が届く設計になっています。
更に、慣れていない人にとっても電話・オンライン通話・訪問サービスなどを通してカスタマーサポートが充実しているものもあり、むしろ適していると感じる人もいるかもしれません。
業務効率化ソフトは、大手建築企業・中堅建築企業・一人親方など誰でも活用でき、組織規模・現場規模を問わずに活用可能です。
ぜひエクセルテンプレートよりも深度化して現場事務作業の複数のIT化を同時に行いたいときは、工程管理ソフトの導入を検討してみてください。
まとめ
本記事を通して各種工程表の特徴や使い方を理解できたでしょうか?
各種工程表の違いを理解して自分の現場に適した工程表の導入を検討してみてください。
また、工程表を作成するときのポイントを理解し、エクセル、工程管理ソフトなど自分の現場に適した工程管理表作成ツールを用いて導入を検討してみてください。
導入初期の慣れるまでに必要な人的コストは、本ソフト導入による業務効率化に加えて、作業の省人化・省力化に寄与するでしょう。