土木・建築現場において月間工程表がどのような役割を示しているのかを詳細に解説します。
月間工程表は、週間工程表・全体工程表の役割と異なり、工事全体のマイルストーンを示すものです。
本記事では、月間工程表の役割に加えてエクセルテンプレートの紹介、工程表の作り方のポイントと留意事項も併せて紹介します。
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月間工程表とは、マイルストーン表
まず初めに、土木・建築現場において「月間工程表」がどのような役割を示しているのかを解説します。
月間工程表は、当該工事のマイルストーンを示しており、週間工程表のように毎日確認するものではなく、全体工程表の確認頻度よりは高い、工事竣工に向けた重要な中間ポイントを達成しているかを確認するときに用いるものです。
そもそも、マイルストーン(milestone)とは、マイル(mile=距離)とストーン(stone=石)という英語を語源とした言葉を組み合わせたものであり、ビジネス上でプロジェクトを完遂するための中間目標地点を指す言葉です。
プロジェクトが大規模であればあるほど、重要なポイントごとに中間目標を設置して進捗を確認するポイントとして設けることが可能です。
そこで進捗、結果を確認してトラブルや遅延が生じた場合であってもどのくらい挽回が必要か明確になります。
上記の通り、月間工程表は工事現場で進捗を確認するためのマイルストーン表として活用することが可能です。
現場は基本的に屋外が多く、天候により工事進捗が左右されます。
そのような中でも一定の期間ごとに新得確認、どのくらい挽回するかが明確になる月間工程表の作成・更新は非常に重要なものになります。
見やすい月間工程表のエクセルでの作り方
次は、実際に月間工程表をエクセルで作るとき、見やすく作成するポイントを解説したいと思います。
月間工程表とは1か月、3か月、6か月など工事現場の規模に応じて複数か月のもので作成するケースもあります。
ここでリストアップする見やすく作成するポイントは、どの月間工程表にも適応するポイントであり見やすく作成するためには非常に重要です。
それでは具体的に、下記5点を解説していきます。
- 週間工程表、全体工程表とリンクしている
- ボトルネック、コントロールポイントが明確である
- 同時期に複数の工種が並行する場合、作業の仕訳の大枠が明確である
- 誰が、いつ、何をすべきか明確になっている
- 行事予定や大型の資機材搬入時期が明確である
週間工程表、全体工程表とリンクしている
現場管理をする上で工程管理は非常に重要になります。
工程管理においては毎日確認する週間工程表と、定期的に更新する月間工程表、工事が竣工するまでの全体期間を示した全体工程表の3種類があることを上述で説明しました。
そこで、月間工程表を見やすくするポイントとして、すべての工程表とリンクしていることが重要になります。
工程表の作成は、現場監督が行うことが多く、現場監督は発注者に工程・進捗を報告する義務があります。
そこで、定期的に報告しているから週間工程表でしか説明しないわけではなく、毎月の工事月報や日常的に全体工事期間の中で遅れているのかを説明するためにも月間工程表を説明する機会があります。
その時に、他の種類の工程表とずれていないか、一貫して進捗・ボトルネック・クリティカルパスが保たれていることを説明できる資料であるべきです。
ボトルネック、コントロールポイントが明確である
月間工程表の主な目的の一つに、ボトルネック、コントロールポイントの可視化があります。
工事を進めるうえで動かせない作業、重要な作業、準備から着手まで多くの時間を要する作業など調整が難しい作業がボトルネック、コントロールポイントとなります。
本工程表では、それらが可視化されて工事全体としてどういう状況かが一目瞭然になります。
上記を明確に示せるように作成することが見やすい月間工程表を作るポイントになります。
また、コントロールポイントは動かせませんが、ボトルネックは細分化や最小化の工夫が可能な為、どのように調整するかが分かる資料としても月間工程表が役に立ちます。
同時期に複数の工種が並行する場合、作業の仕訳の大枠が明確である
月間工程表は週間工程表と比較して工種や一連の作業の大枠を説明することに適しています。
月間工程表の中にも1ヵ月、3ヵ月、6ヵ月工程表等があり、その時々に応じて適切な期間の工程表が用いられます。
分かりやすい月間工程表とは、適切な期間の工程表で1工種や一連の作業が纏めて表されているものが分かりやすいと言えます。
作業の大枠として一連でどのくらいの期間を要し、作業量が可視化されることが最大のメリットです。
誰が、いつ、何をすべきか明確になっている
分かりやすい工程表として、5W1Hとしても知られる、誰が、どんなタイミングでどのくらいの作業量を投じる予定かわかる工程表は分かりやすく、協力会社(下請企業)にも重宝されます。
建設業で協力会社(下請企業)は基本的に日雇いが多く、稼働日数に応じて給料が支給されます。
そのため、特定の現場で長期にわたって安定して業務があることが安心して作業に集中できるポイントになります。
逆に、単発で飛び飛びの仕事をつくられても空いている日程は稼げないので単価が安くても長期間安定して業務がある現場に居たがる傾向にあります。
月間工程表で数か月先の現場の業務量が可視化されるためどの程度の期間、何人をその現場へ派遣すれば良いか判断しやすいため月間工程表が分かりやすく示されていることが非常に重要になります。
行事予定や大型の資機材搬入時期が明確である
土木現場では、河川締切工事における締切用の鋼矢板一式、建築現場における鉄骨など大きな資材置き場のスペースを要する資機材の搬出入のスケジュールが月間工程表に記載されていることは分かりやすい工程表と言えます。
併せて、現場周辺の地区における行事予定を記載して、現場点検、周辺の清掃運動や行事への参加などを考えるポイントになります。
現場工事はその土地に根付いた文化を支えるものであり、現地の文化の上に成り立ちます。
公共事業という意識を高く持ち、上記のような行事や資機材運搬日程、交通規制情報なども月間工程表へ反映させるようにしましょう。
月間工程表の作成時の注意点
次に、月間工程表作成時の注意点・留意点についても解説します。
月間工程表の目的や見やすくするポイントに加えて、作成時の注意点や留意点を抑えることが重要です。
具体的には下記の3点を抑えましょう。
- 雨天や天災時の代替作業を検討する
- 一定期間ごとに余裕を持つ
- 作業員同士で共有する、近隣住民とも共有する
雨天や天災時の代替作業を検討する
工事現場は基本的に屋外であり、天候の影響により工程が大きく左右されます。
日本国内であっても日本海側の天候と太平洋側の天候、降雨量は大きく違うため、天候によって作業調整・手順の変更が必須になります。
そこで、月間工程表を作成するとき、一定期間、当該作業ができない時に代わりに他の作業を行う代替案を考えておくことが非常に重要です。
更にいうと、同じ業種の人間が代わりに行うことができる作業を見積もっておくことが重要です。
上述で記載の通り、作業員は日雇いのため急に業務ができなくなると代わりの現場をその日に見つけることが困難です。
そのため、当該現場で代替作業を見てあげることで作業の順番が変わるだけで業務に従事できることには違いがないという状況をつくれることが好ましいです。
一定期間ごとに余裕を持つ
月間工程表として1・3・6ヵ月の工程表を作成する時、一連の作業につき5〜10%程度の余裕を見込んでおくことが重要です。
現場は想定通りに進む可能性の方が低く、工程表作成により後ろ倒しになることが一般的です。
そのため、余裕のない工程で数カ月先まで工程が書かれてしまうと、遅延を挽回する余裕がなくなってしまいます。
現場にはいつでもイレギュラーな事態が発生しうるという認識で一連の作業ごとに一定期間の余裕を見込んで作成しましょう。
作業員同士で共有する、近隣住民とも共有する
作成した月間工程表は現場従事者の他にも近隣住民にも共有することが重要です。
現場はその土地に根付いたものであるという考え方を上述の通り解説しました。
現場への資機材の搬入などは公道を使うため近隣住民にも交通の影響が出ます。
その為、近隣住民とともに大型の資機材の搬入により公道への規制の有無や片側交互通行時間の有無などの情報共有のためにも関係者間全員で共有認識を持つことが重要です。
【無料】月間工程表エクセルテンプレート
最後に、月間工程表の作成に当たって1,6ヵ月それぞれの無料テンプレートを紹介します。
作成初期は不慣れなためカスタマイズしやすい、使い慣れているエクセル版を使ってみることが効率的です。
エクセルであれば参考資料として、様々なテンプレートが検索しやすい他、現場に適した形にカスタマイズしやすい特徴があります。
現場作業を纏めて効率化したい人は業務効率化ソフトの活用をおすすめします。
業務効率化ソフトでは、勤怠管理やシフト管理、工程表の作成に加えて、様々な機能を併用できるようになります。
業務効率化ソフトを導入した後で使わなくなることを懸念される人もいるかもしれませんが、このようなソフトには、電話・オンライン・対面指導のサポートが充実しているため、使い方が分からなくて使わなくなるケースは少ない傾向です。
本格的に業務改善を図りたい方には、業務効率化ソフトの導入をお勧めします。
1ヶ月工程表エクセル
1ヶ月の工程表を作成するとき、下記リンクより無料のエクセルシートをダウンロードできます。
月間工程表は基本的に1ヵ月版を使用する機会が多く、週間工程表、月間工程表、全体工程表の三種類で現場を工程管理するのが一般的です。
ビズルート
中小企業に向けてIT化やビジネス支援を行っている株式会社エクシアのWebメディア部門が公開している無料版1ヶ月工程表のエクセルテンプレートです。
ダウンロードしてすぐに使えるため汎用性が高いです。
テンプレートNAVI事務局
工程表の1ヶ月シンプル版を無料でダウンロードできるテンプレートサイトです。
本テンプレートの特徴は、年と月を入力するとその月に合わせて日付が自動で入れ替わる関数が入っていることと、土日はそれぞれ青と赤色の文字になることです。
開始日、終了日を入力すれば入力した日付に合わせた欄に色がつき、作業日はオレンジ色の色が入ることも分かりやすさを向上させます。
曜日やセルの色に関して変更したい場合は「条件付き書式」で簡単に変えることが出来るため汎用性も高いです。
シンプルな工程表になっていますのでご自由にアレンジしてご利用ください。
(上段:シンプルタイプ、下段:色付きタイプ)
③ 建設業向け管理システム アイピア
AIPPEAR NET(アイピアネット)は、今すぐ実践したくなる建築業向けノウハウを提供するために生まれたリフォーム・建築業界向け情報メディアです。
建築業界(リフォーム・工務店)向けテンプレート集のぺージから1ヶ月版の工程表のエクセルシートをダウンロードできます。
6ヶ月工程表エクセル
6ヶ月の工程表を作成するとき、下記リンクより無料のエクセルシートをダウンロードできます。
6ヵ月工程表は、ダムやトンネル工事などの超大規模工事で活用されやすい傾向にあり、工期が3年以上のものに採用されます。
全体工程表や年間工程表を通してももう少し詳細に全体的な工程を把握したい時や、大型建設機械を導入するときの現場状況を把握するためにも6ヵ月工程表が適用されます。
ビズルート
上記の月間工程表でも作成したビズルートが提供する無料版エクセル工程表のテンプレート(6ヵ月版)です。
月間工程表を提供しているサイトでは6ヵ月版も同様に提供している傾向にありますが、6ヵ月版を使用する際にはどの程度、業務を細分化して示すかが重要になります。
テンプレートNAVI事務局
本ソフトも上記で紹介したテンプレートNAVI事務局から提供されている工程表になります。
上記同様に年と月を入力するとその月に合わせて日付が自動で入れ替わる関数が入っているため、土日はそれぞれ青と赤色の文字になります。
建設業向け管理システム アイピア
上記でも紹介したAIPPEAR NET(アイピアネット)からも6ヶ月版の工程表を無料でダウンロードできます。
初めて6ヵ月版の工程表を作成する際には、本工事管理ソフトなどを活用して作り方を学びながら利用することをおすすめします。
まとめ
月間工程表について、目的や作り方、注意点・留意点を理解できたでしょうか。
月間工程表は、全体工程表、週間工程表に次いで必要になる工程表ではありますが、中・大規模工事現場において使われます。
工程表作成には、国土交通省の無料テンプレートフォーマットの他、Excelなど無料でダウンロードできるものが多数あります。
業務効率化ソフトの導入も念頭に置きつつ、工事規模や継続して使い続けることなど長期的に考えて導入を検討いただければ幸いです。